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SAC(スペシャリスト・アスリート・クラブ)

1.S.A.C とは  S.A.C(スペシャリスト・アスリート・クラブ):通称サック)は 1998(平成 10 年)、仙台市を拠点に活動を開始し 16 年になります。
  S.A.C では、中学生以上の歩くことのできる知的障害者を対象に陸上競技、フットサルを能力 に 3 グループ に分けて実施しています。 S グループ(スピードグループ)は重度障害を併せ持ち、歩行に於いても介助を必要としている方も多いグル ープです。
 スピードグループのスポーツの目標は「動きたい」「あそこへ行ってみたい」という人間としての根 本的な知的要求を満たしてあげるもので、スタッフ、ボランティアは個々に 1 人または 2 人がついて競技場内の 散策活動を中心に活動しています。
 A グループ(アタックグループ)は普段運動不足になりがちな中度の知的障害者を対象としています。中には肥満、心臓病、喫煙が習慣化している者など、成人病になりつつある方もいます。アタックグループとしての スポーツの目標は運動不足の解消と健康維持のためのレクリエーション活動です。スタッフ、ボランティアの数 は競技種目により異なりますがアスリート 5 人~10 人に対し 1 人程度です。
 C グループ(チャレンジグループ)は比較的運動能力が高く(健常者の方達と比較するとやや劣りますが)軽 度の知的障害者を対象としています。チャレンジグループのスポーツの目的は、地域社会の中で生きることで あり、健常者と同じ競技種目に出場し、その意識を共有することにあります。

 .S.A.C 真の目的とは
私が携わっている知的障害者の方達は、幼いころから他者と争うことを避けて過ごしてきた方が多いです。 「争うことはいけないことである」という概念を強く印象付けられながら、過ごしていたためです。負けること の経験を避けて(隠されて)これまでを過ごしてきたと考えます。この概念を捨てなければ競技スポーツに参 加できないと思います。
「負けてしまった。→つまらない。→もうやらない。」という連鎖から、「負けてしまった。 →悔しい。→勝ちたい。→練習しよう。」という方向性の転換が必要なのです。  競技スポーツは個人の勝ち負けという楽しみよりも、チームとしての連帯感やその場での感動の共有が大切 であると考えます。   15 年以上継続指定活動しているアスリートを含め、13 歳から 46 歳までの会員が切磋琢磨し合い活動を行 っています。彼らが長く続いているのは、トップアスリートの育成を目的としていないからです。   現在、スタッフやボランティアは、「トップアスリートの育成よりもおもしろいことがある。」という考えをもち 援助をしています。「でいないと思うことが案外できる。」   「アシストによる伸び率が高い。」という事実 を体験できたからです。

 3.なぜ、陸上とフットサルなのか。
知的障害者は概念形成、抽象的な思考・情報の操作が困難です。   例えば、フットサルにおいて、個別のパス練習等の技能練習は比較的スムーズに進みますが、多数でのパ ス練習やフォーメーションプレーは難しいものがあります。特に自閉症を併せ持つ方は、他者とのかかわり自 体が困難なため、プレー以前に人間関係の育成を行う必要があります。また、ダウン症の方は声がけによる 励ましや激励によって思った以上の能力を発揮することもあります。技能上の援助はもちろんのこと、情意 面における援助も必要とされます。  
現在のフットサルチームは、ダウン症を持つ方達をトップ 3 にした自閉症との混合チームの育成を行ってい ます。
シュートができるのはダウン症、パスを正確に出す事ができるのは自閉症とういう役割分担で試合を 行っています。対戦チームは、単一知的障害者です。   陸上の練習は「いつの間にか走っている陸上競技」を目指しています。ラダー、マイクロハードル、障害物 等の目標物をトラックに置き、前に進むことから始め、2 時間のトレーニングで、2000m~5000m の距離を知ら ず知らずに走る(歩く)よう促しています。

 4.専門性のあるコーチングと障害を生かしたトレーニング   ウオーミングアップからクールダウンまで、陸上競技とフットサルのトレーニングは微妙に異なります。
動か す筋肉の動き(ベクトル)が異なるためです。   例えば、ラダートレーニングの場合、同じもも上げでも、つま先を挙げてストライドを意識した陸上練習とつ ま先を下げボールを意識したサッカー練習が異なるなどです。また、初めて運動を行う知的障害者は後ろ向 きに歩くことが難しいです。線に沿って真っ直ぐ下がろうとしても、つま先の向きが並行にならず垂直になる ことが多いです。障害から成る身体の動きと競技種目に慣れるための身体の動きを合わせたトレーニング方 法が必要となります。

5.今年度(平成 26 年度)の各種大会への参加
  宮城県・仙台市障害者スポーツ大会 陸上競技大会・同フライングディスク大会  ・松島ハーフマラソン 10 ㎞・2014 北海道・東北障がい者陸上競技選手権 ・いわぬまエアーポートマラソン 3 ㎞、10 ㎞・他市民陸上競技会 に出場しました。
  いわぬまエアーポートマラソン 3 ㎞は足切りが無いので歩いてでも完走できれば記録証をいただけます。A グループ(アタックグループ)、S グループ(スピードグループ)に奨励しています。

6.レクリエーション活動
 ボウリング大会  ・初詣マラソン(東照宮まで往復 5 ㎞コース) ・CSC 交流会(仙南の姉妹クラブ)  ・夏の合宿(震災の年から秋田の海岸で実施)
宮城県障害者スポーツ指導員ニュース No.30 ④  

.終わりに   今後の S.A.C の在り方として、「いかに健常者と同じ土俵の上で一緒にスポーツを楽しむことができるか」 が重要であると考えます。
障害者の方が気軽に参加できる各種プログラムやスポーツの開発と情報提供で きる場、そのような場の設定を多く作っていきたいと考えています。  以上が紹介概要です。

   さて、発表を終えた当日から、名刺交換、具体的な活動の問い合わせ、他団体との交流が増えました。  
 しかし S.A.C においては、事務局がクラブ長自宅であり、各庶務をスタッフが本業の合間に分担しながら行 っている状態です。業務が増えることは運営組織そのものを危機にしてしまいます。組織が大きくなること は好ましくありません。  
 利点としては、ボランティアの問い合わせが増えたことがあげられます。特に仙台在住の方で本大会に参 加されたメンバーからの問い合わせが多くありました。サッカー経験のある方からフットサルの指導に参加し たい。とか、毎回は難しいが参加したい。などの問い合わせが増えました。
是非にとお願いし、毎回 2、3 名の ボランティアが増えました。いろいろな場で S.A.C の紹介を行いたいのは山々なのですが、現状業務を維持 しながらの活動を進めるのがベストなのか、別の発展を模索する段階に至ったのか、今後の課題は山積みの 状態です。
この原稿をご覧になって方々にも、いろいろお知恵を頂きたいと思います。 
                                          S.A.C クラブ長 池田 洋貞

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